2002年 秋

お顧客各位 様

 21世紀の2年目も残り少くなりました。世紀が変ると言う大節目を越えた時、何か大きな変化が始まるのではないかと期待したものですが、初年度から激動が起って、世界のリーダー米国が不況に落ち込み、ヨーロッパ諸国にも連鎖して行きましたので、一足早く赤字大国になっていた日本の財政再建などは、円安インフレでも起らぬ限り不可能になってしまいました。

 預金利子は実質0になったままで、零どころか先々は預り料を取られるかも知れぬ程、強盗、泥棒、ひったくり等が増え、失業者や自殺者も増えるばかり、全く大変な21世紀の始まりです。

 日本は一体どうなって行くのか、とにかく質素倹約で辛抱して働く事くらいが、大多数の身の処し方でしょうか、日本国を取りしきっている政治家やお役人たちも、国民と同じように痛みを分かち合って改革してもらわねば、日本の値打ちは下がるばかりでしょう。

 半世紀ほど前、建国以来初めて戦争に敗けた日本は、廃墟になった国土を復興するために、国民の預金の半分を《財産税》として徴収しました。

 私の家は日本興業銀行福岡支店の直ぐ近くに在りましたので、預金は殆ど興銀に預けておりました。そのため、財産税を納めただけでは済まず、残りの預金も全部没収されてしまいました。興銀が、戦争に最も協力した公営銀行だったからだそうで、何も知らない預金者たちも巻き添えを食って罰せられた訳です。父の仕事は軍需産業ではなかったのですが、この財産税と銀行の飛ばっちりで事業は潰れ、何故か興銀は生き残って大銀行になって行きました。

 学徒出陣で出征していた兄が、傷病の半病人になって南方戦線から復員して来たのは、空襲、終戦、財産税、農地改革(地主の田畑没収)と続いた災難に打ちのめされて、息たえだえの感じで生きのびていた終戦翌年の夏でしたが、その頃、日本の政治家たちが、何を言っていたのか、殆ど憶えておりません。何しろ、家族の中で元気があったのは私一人でしたから、19歳の若者の私は、家族を生き残す食い物探しから、何から何まで大忙がし、学業なども放り出して大奮闘していたからです。

 今の日本政府の財政状態を見ると、終戦時の日本と余り変らぬ位の赤字になっているような気がして、ぞっとしています。

 国も、地方自治体も、特殊法人も、まるで成金のどら息子のように、使い放題にお金を使いまくって、『今年からは、国債の追加を30兆円に押えた』なんていうのが精一杯の倹約ですから、真面目に聞いていたら頭がおかしくなって来ます。

 今の日本の政治家や官僚は、あの大戦争を起した半世紀前の日本軍閥や官僚と、同じ性質の持主らしいと思うのは、私だけではありますまい。日本の財政赤字は、恐らく、終戦時の財産税くらいの無茶苦茶をせねば、どうにもなるまいと思ってしまいます。

 所が、或る悪賢い経済通の評論を聞くと、『ワハハ、何も心配する事はありませんぞ!』と笑い飛ばすのです。

 『日本政府が、いくら無駄使いして財政赤字が増えたって、外国から借金して使った訳ではないから、金返せと催促する者は誰もいない。ただ、借金(国債)が利子でふくらむのは都合が悪いから、預金利子も暫く零で辛抱してもらう訳で、いずれ景気が戻ったら、増税して借金の穴埋めをすればよく、もし景気が良くならなかったら、造幣局でお札を印刷して返すだけの事。借金を片附けたら、又預金利子も払うようになるでしょう。』・・・・と言う話です。新しいお札のデザインも決り、印刷準備も終っているとか、日本の財政などを色々心配する者が阿呆みたいで、この話は嘘か本当か、さっぱり解りません。

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 少し明るいご報告もいたしましょう。

 ソンバーユの品質向上の技術部に、島内康隆と言う《薬学博士》の学位を持つ学者社員がいます。私の義理の弟(妹の夫)ですが、10年前から弊社の技術顧問に来てくれました。 私は、初めは余り頼りにしていなかったのですが、創業者の私が50年かかっても出来なかった程の品質改良を、わずか5年の間にしてくれました。常温では半年もせぬ中に腐って臭くなる馬油を、何の化学薬品も使わずに、何年も腐らない純粋油にする・・・その技術を開発してくれたのです。

 化学薬品を使わない方法を、薬学博士が考え出すのですから、感心するしかありません。

 ソンバーユを日本一の品質にしただけでは物足りぬらしく、今は、人間の脂肪との類似点などを、面白そうに研究しております。

 私は、製造の方の仕事は解るのですが、販売営業の方は、今はもう見物しているだけで、オフコンとかパソコンとか、なじめない機器がひしめいて、働いている社員たちが宇宙人に見えて来ます。インターネットで寄せられる通信は若い人からのが多く、発信人の名前もない怪文もあります。

 『にきびにつけたが効かないぞ。いんちき薬を売るなっ!ぐるぁー!』なんて言うのもありました。ぐるぁー!と言うのは、IT用語らしく、『こらー!』とか『馬鹿野郎ー!』とか言う意味だとか、発信者の名前がないので返事もできません。

 ニキビは、青春ホルモンの自然現象で皮膚病ではありません。細菌が入って化膿した時には、その化膿だけは治せますが、青春ホルモンの分泌を治せる訳ではないのです。

 IT通信でも、私を名指しで質問が来る事がありますが、私の仕事は、主に郵便で来る手紙を読んで、ご返事を書くことです。これは、もう20年以上も続けて来ましたので、手紙友達になったお客様も多く、私の指にはペンだこが出来て、毎月削り取らねばならぬ持病?になっています。(※夏に報告した乾癬は、完治して再発しません。)

 自分の遺伝子を残すことは、生物の究極の目的ですが、私は結婚が遅れて、末娘がやっと昨年結婚し、この10月に孫遺伝子(女の子)が生まれて来ました。すると、ITで『ぐるぁー!』なんて言われて、少し曇っていた気分が晴れて、おまけに怪しからぬ日本のお偉方たちに対する腹立ちも、何となく納まってしまい、『やっぱり日本が一番いい国だ!』なんて思うのですから、世話はいりません。

 終りに年配の方に申し上げます。『転ばず、風邪ひかず、食べ過ぎず、人生を感動して暮らすのが、元気で長生きのコツであります。』時々、ぐるぁー!なんて叫ぶのも、なかなか面白うございますぞ!では、元気にお過し下さいませ。

合掌